今回は『ツイン・ピークス』で有名なデヴィッド・リンチ監督のそれだけじゃない、その他におすすめしたいタイトル3作品とおまけの作品をご紹介していきたいと思います。
リンチ映画と言えば、とかく難解なイメージや独特の世界観で食わず嫌いで止まってしまっている人が多いのではないでしょうか。
その中でも唯一観たことのある『ツイン・ピークス』だけで、立ちどっまてしまうのはとっても勿体ないです。
これからご紹介する3作品とおまけをご覧になって、奇妙で奥深くて美しいリンチ映画の世界を楽しんで頂けたら幸いです。
『ツイン・ピークス』だけじゃない!!鬼才デヴィッド・リンチ監督の初心者におすすめするタイトル3作品+おまけ!!
- 『ブルーベルベット』(1986年)
- 『ワイルド・アット・ハート』(1990年)
- 『マルホランド・ドライブ』(2001年)
- おまけ・・・『ストレイト・ストーリー』(1999年)
一度観たら決して忘れられない世界が描かれるデヴィッド・リンチ作品の中でも、比較的すんなり表面上は心の内側に入り込んでくる3作品をピックアップしてみました。
”表面上は”という限定つきではあるんですが(笑)
これらの作品たちは、『ツイン・ピークス』を挟んで80年代中盤から00年代初頭にかけて、名実ともにまさにリンチ監督の作風がもっとも花開いた成熟期だと言えるんじゃないでしょうか。
特に、初期『エレファント・マン』や『砂の惑星』などのメインストリームの映画時代に終わりを告げて、原点であるデビュー作『イレイザーヘッド』の様な、リンチ独特の美学と異常なまでのこだわりの完璧主義が、ようやく表現として顔を出してきた作品群でもあります。
では、デヴィッド・リンチ作風の純度が、一気に上がったこれらの3作品をおまけも交えて、以下でご紹介していきますね。
『ブルーベルベット』
舞台となるのは、1950年代雰囲気漂うアメリカの小さな田舎町。
主人公はカイル・マクラクラン扮する大学生のジェフリー。
突然の発作に襲われた父親の見舞いに行った病院の帰り道、ふと茂みの中に異様なものを見つけた事から物語が転がり出していきます。
見慣れた日常世界からガラッと異常世界へと、いつの間にか足を踏み入れてしまっている。
明るい絵葉書のようなアメリカの典型的な片田舎から一転して、雑然とした暗い草むらの茂みの中へと入り込んでいくカメラワークの冒頭部から、何だか今後の一筋縄では行かないドキドキした予感を沸き立たせてくれます。
それは地面に這いつくばる虫たちのウジャウジャした蠢きによって、物語全体を象徴するかのようなんですよね(笑)
外見は様々な登場人物たちの裏に潜む性、暴力、官能の世界を、一見ハリウッド流の謎解きミステリーで進行していくんですが、いつの間にか倒錯感満載の幻想的な世界に引きずり込まれている、そんなリンチらしい特有の作品世界が堪能できるのが本作なんじゃないでしょうか。
出演は、カイル・マクラクラン、ローラ・ダーン、イザベラ・ロッセリーニ、そして怪優デニス・ホッパーなどです。
撮影監督に、フレデリック・エルムス、音楽をアンジェロ・バダラメンティが担当、まさに製作陣はリンチ組になっています。
『ワイルド・アット・ハート』
この『ワイルド・アット・ハート』は、1990年のカンヌ国際映画祭グランプリ、パルム・ドール賞に輝いた作品でもあります。
無理やり言うならば、ラブロマンス+バイオレンスコメディ。
なので比較的、難解なイメージで取っつきにくいと思われがちなリンチ映画の中でも、とりわけ分かりやすい作品なのではないでしょうか。
まぁ、そこはデヴィッド・リンチなのであくまでも表面的には、という意味ではあるんですけどね...(笑)
舞台はアメリカ南部。主人公の恋人同士の2人、セーラー(ニコラス・ケイジ)とルーラー(ローラ・ダーン)。
娘のルーラーに偏執狂的な愛情を持つ母親のマリエッタから逃れるために、カルフォルニアへと逃避行を続ける若い2人のロードムービー。
刺激に満ちた逃避行には、2人の中を引き裂こうと母マリエッタから差し向けられた恋人、それを追う殺し屋、そして立ち塞がる暗黒街のボス。
追う者と追われる者、それをまた追う組織など、次々現れる奇妙でエキセントリックな登場人物たちがドタバタと、時にはシニカルにそしてコミカルに描かれています。
突然叩きつけられるような暴力や性描写で緊張感も混ざり合って、混沌としたロードムービーがどうやって終焉を迎えるのかが益々気になってしまう作りになっています。
またポイントとして、『オズの魔法使い』が下地にオマージュされていたり、エルヴィル・プレスリーの挿入歌が印象的に使われているのが、嬉しいところです。
そして、何と言っても最高に感動するアメージングなラストシーンが圧巻なので、どうか最後まで諦めず楽しんで欲しいと思います。
出演は、ニコラス・ケイジ、ローラ・ダーン、ウィリアム・デフォー、ハリー・ディーン・スタントン、イザベラ・ロッセリーニなど。
撮影をフレデリック・エルムス、音楽担当にアンジェロ・バダラメンティといつものリンチ組の製作陣です。
『マルホランド・ドライブ』
この作品で、デヴィッド・リンチはカンヌ国際映画祭の監督賞を受賞しました。
当初は、テレビシリーズ用に制作が始まった『マルホランド・ドライブ』なだけに、本作品には様々な要素が入り組んでいるので、直線的に進んでいくストーリーというものがハッキリ言うと存在しないんですよね(笑)
現実、空想、回想、夢などのシーンが説明のないまま散りばめられているので、見る側はそれぞれの解釈で目の前の展開に身を委ねていくしかないのです。
脈略の無さや意味不明さに身を投じた観客である私達が、無理矢理にでもストーリーと世界観を組み立てる事を強制的に要求される感じが、本当にジグソーパズルみたいで楽しいんですよね。
舞台は、LA北部の山を横断する実在の道路”マルホランド・ドライブ”。
ハリウッドを見渡せることの出来る、この曲がりくねった道路をモチーフに、輝かしい映画業界のダークサイドを妖艶で危険なミステリー仕立てで魅せてくれます。
真夜中の交通事故、記憶喪失の女と女優志願の女、新進気鋭の映画監督、大金と青い不思議な形の鍵、赤いランプ、灰皿、バスローブ、コーヒーカップ、唯一記憶の手掛かりとなる言葉”マルホランド・ドライブ”。
それらを含めた様々なパズルのピースを集めて、あなただけのオリジナルのリンチ映画を紡いでいって欲しいと思います。
ちなみに、同じようにハリウッドを舞台にした映画『サンセット大通り』(1950年)をオマージュしたらしいようです。
出演は、ナオミ・ワッツ、ローラ・ハリング、撮影は、ピーター・デミング、音楽が、アンジェロ・バダラメンティ。
おまけ...『ストレイト・ストーリー』
お口直しな感じですが、この作品はリンチ映画の中でも唯一稀有な作品だと言えます。
ニューヨークタイムズに掲載された実話を基にした物語で、タイトルでもあり主人公の名前でもある、文字通り”ストレイトなお話し”なんです。
それ以上でもそれ以下でもない、何の飾り気も毒気もない、純粋無垢なロードムービー。
長い間音信不通だった兄に会いに行くため、ひとり芝刈り機に乗って旅に出る老人を淡々と描いていく。
極端に言えば、本当にそれだけのストーリーです。
だからこそ”ストレイト”に心に届いて、いつの間にか観ている2時間あまりののうちに温かい空気に包まれてしまうんです。
舞台は、アメリカ・アイオワ州ローレンス。主人公の73歳の老人アルヴィン・ストレイト(リチャード・ファーンズワース)は、喧嘩別れをして以来10年前から音信不通だった兄、76歳のライル(ハリー・ティーン・スタントン)が、心臓発作で倒れたという知らせを受けます。
兄ライルが住むウィスコンシン州マウント・ザイオンまでは、およそ350マイル(約560Km)。
車の免許もない、足腰も不自由なアルヴィンは、周囲の反対を押し切り、芝刈り機に乗り自分の力だけで頑固にも兄ライルの家を訪れる決意をします。
さて、アルヴィンは時速5マイル(約8Km)の速度の芝刈り機にまたがって、6週間のグレートジャーニーの末、病気の兄ライルの元へ無事たどり着けるのでしょうか。
最も印象的なのは、旅の途中で会う若者たちに言うこの言葉、”歳を取って最悪なのは、若かった頃を覚えていることさ”。
出演は、リチャード・ファーンズワース、ハリー・ディーン・スタントンなど。
撮影は、フレディ・フランシス、音楽には、アンジェロ・バダラメンティ、というリンチ組のおなじみの制作作陣が顔を並べています。
まとめ
- 『ブルーベルベット』(1986年)
- 『ワイルド・アット・ハート』(1990年)
- 『マルホランド・ドライブ』(2001年)
- おまけ・・・『ストレイト・ストーリー』(1999年)
とにかく何も考えずこの作品たちをご覧いただければ『リンチワールド』が感じられるはず!
あとはお好きな深みにハマっていただければ幸いです。
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